父のこと3 〜 D51  488  〜

 

 

「 もしも絵をやってたら、おまえよりうまいと思うぞ。」

 父は酒に酔うと、赤ら顔でそう言ってからかってきた。

 

 「俺はなぁ、機関車のナンバーを白ペンキで書いてたんだ。

  それをいっぱいの人から褒められでだんだぞ。

 んだがら、絵描いでも俺の方が絶対うまい」

 

 

  負けず嫌いの父は、そう言って何度も頷いた。

  そんな事を言われたことは一度や二度ではない。

 

 

 

 

 昭和二十年の終戦間近、父は15歳、

 見習いとして福島機関区で手伝いをしていた。

 

 ほとんど力仕事だったらしいが、父にはもう一つ、

 白ペンキで機関車のナンバーを書くことが任されていた。

 

 その書いた文字は、D51 488、

 

 通称デゴイチ・ヨンパーパーと呼ばれた蒸気機関車である。

 戦争による金属不足で国に没収されたナンバープレート代わりに

 直に白ペンキで書くのだ。

 

 

 

 「おまえは、本当に番号書くのうめえなぁ」

大人の機関士達に褒められていたらしい。

その事は相当嬉しかったに違いない。父親を小さい頃に亡くして、

大人に褒められたことなどなかったのだから・・・。

 

 

そして、それは運命的言葉になった。

 

終戦後、学校を卒業していろいろと働きながら、

昭和二十六年念願の国鉄に就職。長年の機関助手を経て、

僕の生まれる頃に正式な機関士になるのである。

 

 

僕の名前は〝正機〞。それは父の名前〝正義〞の〝正〞と、

〝機関車〞の〝機〞である。

 

 

 

 

(月刊美術二〇〇九年八月号掲載文章)

  〜M氏ノ運転シタ風景ノ記憶 ⑥ より〜

 

 

 

 

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