西へ! 西へ!

 

 

こんなことを思い出した。


修ちゃんに呼ばれて、重い腰を上げた時には、

外は雪が本格的になっていた。

 

校門を出て、車があまり通らない大通り。

奥羽の山の方へ進むと、真っ正面から“吾妻おろし”

の西風が冷たい雪粒とともに向かって来る。

 

(今日は帰るのたいへんだな!)

子供なりに覚悟を決め、頭を西に倒しながら

進んでいると、二十メートル先の修ちゃんは

雪玉をぶつけてきた。

 


 

 

(やったな!)

とすぐにお返しの雪玉を作り始めると、

また、雪玉が耳をかすめる・・

今度は予想しない 逆方向 からだ。

 

(そういえば、さっき小田くんが・・いたな。)

とりあえず、振り返らないで電柱に身を隠す。

そこから田んぼに入り、近くの“積みわら”まで走った。

 

その間に小田くんの顔には、

修ちゃんの投げた雪玉が見事に命中。

西側の修ちゃんが投げると、“吾妻おろしの風”も

手伝って、雪玉はすっごく速い。

 

二人が応戦中に、ニヤニヤしながら

(よし、この間だ。)と

素早く雪玉を三個用意して


二人より西へ、西へ・・。

“吾妻おろし”を味方につけるために !

 

 


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