タクシー会話とDNA


式場に向かうタクシーで、おもむろに聞いてみた。

「ねえ、2014年って景気はどうだった?」


半分白髪で短髪の身なりがさっぱりとした運転手さん。

「ん〜・・ん〜・・なんともねえ〜。」

と言いながら、綺麗な仕草でハンドルを回している。

僕は少し遠くのビルを眺めて答えを待った。


「あんまり売り上げは変わんないけんど、

昔からあったもんが・・なくなったなあ・・」



そしてゆっくりと頭を上下にしながら、

「三十年近くいつも行ってた喫茶店が閉めちゃってねえ・・

あと目印のコンビニとかがなくなっちまったり、

何か、今までど〜りってのが・・ねえ・・」


「ああ〜何となくわかるわあ〜。」

と僕は答えると・・いろんな出来事が浮かんできた。


「でも、孫は生まれたよ。」

と少し早口で運転手さんが言う。

「男の子?女の子?」

「やっと女の子。男の子はたいへんだから。」


いつのまにか、景気の話じゃ無くなってる。


タクシーに乗るたび、そんな会話を繰り返す。

子供の頃、こんな父の無駄話が嫌いだったのに

父のDNAをもうすっかり・・。


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